チぱぬ》かれては余り名誉でないと、名誉心も手伝って、急に始末気《しまつぎ》を出し、夫《それ》からは原稿料が手に入《い》ると、直ぐ多少余分の送金もして、他《ほか》の物を撚《よ》っても、観世撚《かんぜより》だけは撚《よ》って呉れるなと言って遣《や》った。
 で、此時もつい二三日|前《ぜん》に聊《いささ》かばかり原稿料が入った。先月は都合が悪くて送金しなかったから、責《せめ》て此内十円だけは送ろうと、紙入の奥に別に紙に包んで入れて置いたのが、お糸さんの事や何や角《か》やに取紛《とりまぎ》れてまだ其儘になっている。それをお糸さんの身上話を聴くと、ふと想い出して、国への送金は此次に延期し、寧《いっ》そ之をお糸さんに呈して又敬意を表そうかと思った。が、何だか其では聊《いささ》か相済まぬような気もして何となく躊躇《ちゅうちょ》せられる一方で、矢張《やっぱり》何だか切《しきり》に……こう……敬意を表したくて耐《たま》らない。で、お糸さんが軈《やが》てお燗《かん》を直して持って来て、さ、旦那、お熱い所を、と徳利《とくり》の口を向けた時だった、私は到頭|耐《たま》らなくなって、しかし何故だか節倹して、十円
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