sあいだ》に遣《つか》った金は、地所を抵当に入れて借りた金だ。己《おれ》は無学で働きがないから、己《おれ》の手では到底《とて》も返せない。何とかしてお前の手で償却の道を立《たて》て呉れ。之を償却せん時には、先祖の遺産を人手に渡さねばならぬ。それではどうもお位牌に対しても済まぬから、己《おれ》は始終《しょっちゅう》其が苦になっての……と眼を瞬《しばだた》かれた時には、私も妙な心持がした。で、何にも当《あて》はなかったけれど、其式《それしき》の負債は直《じ》き償却して見せるように広言を吐き、月々なし崩しの金額をも極《き》めて再び出京したが、出京して見ると、物価騰貴に付き下宿料は上る、小遣も余計に入《い》る、負債償却の約束は不知《つい》空約束になって了った。その稍《やや》実行の緒《しょ》に就いたのは当り作が出来てからで、夫《それ》からは原稿料の手に入《い》る度に多少の送金はしていたけれど、夫とても残らず負債の方へ入れて了うので、少しも家計の足しにはならなかった。父は疾《と》うに県庁の方も罷《や》められて、其後《そのご》一寸《ちょっと》学校の事務員のような事もしていたが、それも直き又|罷《や》
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