魔フ無い男だ。いつも形勢が既に定《さだま》って動かすべからずなって、其形勢に制せられて始て決心するのだから、学校を除籍せられたばかりでは、未だ決心が出来なかった。唯下宿に臥転《ねころ》んでグズリグズリとして文士に為りそうになっていたのだ。
 始めて決心したのは、如何《どう》してか不始末が国へ知れて父から驚いた手紙の来た時であった。行懸りで愚図々々はしていられなくなったから、始めて斯うと決心して事実を言って同意を求めてやると、父からは怒《おこ》った手紙が来る、母からは泣いた手紙が来る。親達が失望して情ながる面《かお》は手紙の上に浮いて見えるけれど、こうなると妙に剛情《ごうじょう》になって、因襲の陋見《ろうけん》に囚《とら》われている年寄の白髪頭《しらがあたま》を冷笑していた。親戚の某《なにがし》が用事が有って上京した序《ついで》に、私を連れて帰ろうとしたが、私は頑として動かなかった。そこで学資の仕送りは絶えた。
 こうなるは最初から知れていながら、私は弱った。仕方がないから、例の某大家に縋《すが》って書生に置いて貰おうとすると、先生は相変らずグズリグズリと煮切らなかったが、奥さんが飽迄《
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