フ前に敷いて、其処を退《の》くと、雪江さんは礼を言いながら、入替《いりか》わって机の前に坐って、
「遊《あす》んでらっしゃいな。」
と私の面《かお》を瞻上《みあ》げた。ええとか、何とかいって踟※[#「足へん+厨」、第3水準1−92−39]《もじもじ》している私の姿を、雪江さんはジロジロ視ていたが、
「まあ、貴方《あなた》は此地《こっち》へ来てから、余程《よっぽど》大きくなったのねえ。今じゃ私《あたし》とは屹度《きっと》一尺から違ってよ。」
「まさか……」
「あら……屹度《きっと》違うわ。一寸《ちょッと》然うしてらッしゃいよ……」
といいながら、衝《つい》と起《た》ったから、何を為《す》るのかと思ったら、ツカツカと私の前へ来て直《ひた》と向合った。前髪が顋《あご》に触れそうだ。紛《ぷん》と好《い》い匂《におい》が鼻を衝く。
「ね、ほら、一尺は違うでしょう?」と愛度気《あどけ》ない白い面《かお》が何気なく下から瞻上《みあ》げる。
私はわなわなと震い出した。目が見えなくなった。胸の鼓動は脳へまで響く。息が逸《はず》んで、足が竦《すく》んで、もう凝《じッ》として居られない。抱付くか、逃出
前へ
次へ
全207ページ中129ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
二葉亭 四迷 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング