sもが》くけれど、生憎《あいにく》口実が看附《みつ》からない。うずうずして独りで焦心《じれ》ていると、ふと椽側にバタリバタリと足音がする。其足音が玄関へ来る。確かに雪江さんだ。部屋の前を通越《とおりこ》して台所へ行くか、それとも万一《ひょっと》障子が開《あ》くかと、成行《なりゆき》を待つ間《ま》の一|分《ぷん》に心の臓を縮めていると、驚破《すわ》、障子がガタガタと……開《あ》きかけて、グッと支《つか》えたのを其儘にして、雪江さんが隙間から覗込みながら、
「勉強?」
と一寸《ちょっと》首を傾げた。これが何を聞く時でも雪江さんの為《す》る癖で、看慣《みな》れては居るけれど、私は常《いつ》も可愛らしいと思う。不断着だけれど、荒い縞の着物に飛白《かすり》の羽織を着て、華美《はで》な帯を締めて、障子に掴《つか》まって斜《はす》に立った姿も何となく目に留《と》まる。
ああ求むる者に与えられたのだ。神よ……といいたいような気になって、無論|莞爾々々《にこにこ》となって、
「いいえ……まあ、お入ンなさい。」
「じゃ、私《あたし》話して入《い》くわ。奥は一人で淋しいから。」
珍客々々! 之を優待せ
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