、事は能《よ》く解らなかったが、側《そば》に焼芋が山程盆に載っていたから、夫で察して、礼を言って、一寸《ちょっと》躊躇したが、思切って中《うち》へ入って了った。
 雪江さんはお薩《さつ》が大好物だった。私は好物ではないが、何故だか年中空腹を感じているから、食後だって十切位《ときれぐらい》はしてやる男だが、此時ばかりは芋どころでなかった。切《しきり》に勧められるけれど、難有《ありがと》う難有うとばかり言ってて、手を出さなかった。何だかもう赫《かっ》となって、夢中で、何だか霧にでも包まれたような心持で、是から先は如何《どう》なる事やら、方角が分らなくなったから、彷徨《うろうろ》していると、
「貴方《あなた》は遠慮深いのねえ。男ッて然う遠慮するもンじゃなくッてよ。」
 と何にも知らぬ雪江さんが焼芋の盆を突付ける。私は今|其処《そこ》どころじゃないのだが、手を出さぬ訳にも行かなくなって手を出すと、生憎《あいにく》手先がぶるぶると震えやがる。
「如何《どう》して其様《そんな》に震えるの?」
 と雪江さんが不審そうに面《かお》を視る。私は愈《いよいよ》狼狽して、又|真紅《まっか》になって、何だか訳
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