うともせず、また匿くすまいともせず※[#白ゴマ点、209−6]胸に城郭を設けぬからとて、言って花の散るような事は云わず、また聞こうともせず、まだ妻でない妻、夫でない夫、親で無い親、――も、こう三人集ッたところに、誰が作り出すともなく、自らに清く、穏な、優しい調子を作り出して、それに随《つ》れて物を言い、事をしたから、人々があたかも平生の我よりは優《まさ》ったようで、お政のような婦人でさえ、尚お何処《どこ》か頼もし気な所が有ったのみならず、却ってこれが間に介《はさ》まらねば、余り両人《ふたり》の間が接近しすぎて穏さを欠くので、お政は文三等の幸福を成すに無《なく》て叶《かな》わぬ人物とさえ思われた。が、その温《あたたか》な愛念も、幸福な境界《きょうがい》も、優しい調子も、嬉《うれ》しそうに笑う眼元も口元も、文三が免職になッてから、取分けて昇が全く家内へ立入ったから、皆突然に色が褪《さ》め、気が抜けだして、遂《つい》に今日この頃のこの有様となった……
今の家内の有様を見れば、もはや以前のような和いだ所も無ければ、沈着《おちつ》いた所もなく、放心《なげやり》に見渡せば、総て華《はなや》かに、
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