聞こえる……「なに、十円さ」と突然|鼓膜《こまく》を破る昇の声に駭《おどろ》かされ、震え上る拍子《ひょうし》に眼を看開《みひら》いて、忙わしく両人《ふたり》の顔を窺《うかが》えば、心附かぬ様子、まずよかッたと安心し、何喰わぬ顔をしてまた両人の話を聞出すと、また眼の皮がたるみ、引入れられるような、快《よ》い心地になッて、睡《ねむ》るともなく、つい正体を失う……誰かに手暴《てあら》く揺ぶられてまた愕然《がくぜん》として眼を覚ませば、耳元にどっと高笑《たかわらい》の声。お勢もさすがに莞爾《にッこり》して、「それでも睡いんだものを」と睡そうに分疏《いいわけ》をいう。またこういう事も有る※[#白ゴマ点、199−16]前のように慾張ッた談話《はなし》で両人は夢中になッている※[#白ゴマ点、199−17]お勢は退屈やら、手持|無沙汰《ぶさた》やら、いびつに坐りてみたり、危坐《かしこま》ッてみたり。耳を借していては際限もなし、そのうちにはまた睡気《ねむけ》がさしそうになる、から、ちと談話《はなし》の仲間入りをしてみようとは思うが、一人が口を箝《つぐ》めば、一人が舌を揮《ふる》い、喋々として両《ふた》つ
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