てお勢が母親に孝順《やさしく》する、折節には機嫌《きげん》を取るのかと思われるほどの事をも云う。親も子も睨《ね》める敵《かたき》は同じ文三ゆえ、こう比周《したしみあ》うもその筈《はず》ながら、動静《ようす》を窺《み》るに、只《ただ》そればかりでも無さそうで。
 昇はその後ふッつり遊びに来ない。顔を視《み》れば鬩《いが》み合う事にしていた母子ゆえ、折合が付いてみれば、咄《はなし》も無く、文三の影口も今は道尽《いいつく》す、――家内が何時《いつ》からと無く湿ッて来た。
「ああ辛気《しんき》だこと!」と一夜《あるよ》お勢が欠《あく》びまじりに云ッて泪《なみだ》ぐンだ。
 新聞を拾読《ひろいよみ》していたお政は眼鏡越しに娘を見遣《みや》ッて、「欠びをして徒然《つくねん》としていることは無《ない》やアね。本でも出して来てお復習《さらい》なさい」
「復習《さらえ》ッて」とお勢は鼻声になッて眉《まゆ》を顰《ひそ》めた。
「明日《あした》の支度《したく》はもう済してしまッたものを」
「済ましッちまッたッて」
 お政は復《また》新聞に取掛ッた。
「慈母《おっか》さん」とお勢は何をか憶出して事有り気に云ッ
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