すが、まだ明日《あした》の支度《したく》をしませんから……」
けれども、敵手《あいて》が敵手だから、一向|利《き》かない。
「明日《あした》の支度? 明日の支度なぞはどうでも宜いさ」
と昇はお勢の傍《そば》に陣を取ッた。
「本統にまだ……」
「何をそう拗捩《すね》たンだろう? 令慈《おっかさん》に叱《しか》られたね? え、そうでない。はてな」
と首を傾《かたぶ》けるより早く横手を拍《う》ッて、
「あ、ああわかッた。成《な》、成《な》、それで……それならそうと早く一言云えばいいのに……なンだろう大方かく申す拙者|奴《め》に……ウ……ウと云ッたような訳なンだろう? 大蛤《おおはまぐり》の前じゃア口が開《あ》きかねる、――これやア尤《もっとも》だ。そこで釣寄《つりよ》せて置いて……ほんありがた山の蜀魂《ほととぎす》、一声漏らそうとは嬉《うれ》しいぞえ嬉しいぞえ」
と妙な身振りをして、
「それなら、実は此方《こっち》も疾《とう》からその気ありだから、それ白痴《こけ》が出来合|靴《ぐつ》を買うのじゃないが、しッくり嵌《は》まるというもンだ。嵌まると云えば、邪魔の入らない内だ。ちょッくり抱
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