験で解ります、そりゃ掩《おお》う可《べか》らざる事実だから何だけれども……それに課長の所へ往こうとすれば、是非とも先《ま》ず本田に依頼をしなければなりません、勿論《もちろん》課長は私も知らない人じゃないけれども……」
「宜いじゃ有りませんか、本田さんに依頼したッて」
「エ、本田に依頼をしろと」
 ト云ッた時は文三はモウ今までの文三でない、顔色《がんしょく》が些し変ッていた。
「命令するのじゃ有りませんがネ、唯依頼したッて宜いじゃ有りませんか、と云うの」
「本田に」
 ト文三はあたかも我耳を信じないように再び尋ねた。
「ハア」
「あんな卑屈な奴に……課長の腰巾着《こしぎんちゃく》……奴隷《どれい》……」
「そんな……」
「奴隷と云われても耻とも思わんような、犬……犬……犬猫同前な奴に手を杖《つ》いて頼めと仰しゃるのですか」
 ト云ッてジッとお勢の顔を凝視《みつ》めた。
「昨夜《ゆうべ》の事が有るからそれで貴君はそんなに仰しゃるんだろうけれども、本田さんだッてそんなに卑屈な人じゃ有りませんワ」
「フフン卑屈でない、本田を卑屈でない」
 ト云ッてさも苦々しそうに冷笑《あざわら》いながら顔を背
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