のだから、橋渡しをして貰《もら》ッて課長の所へ往《い》ッたらばどうだと仰しゃるのです。そりゃ成程慈母さんの仰しゃる通り今|茲処《ここ》で私さえ我《が》を折れば私の身も極《き》まるシ、老母も安心するシ、『三方四方』(ト言葉に力瘤《ちからこぶ》を入れて)円く納まる事だから、私も出来る事ならそうしたいが、シカシそう為《し》ようとするには良心を締殺《しめころ》さなければならん。課長の鼻息《びそく》を窺《うかが》わなければならん。そんな事は我々には出来んじゃ有りませんか」
「出来なければそれまでじゃ有りませんか」
「サ其処《そこ》です。私には出来ないが、シカシそうしなければ慈母さんがまた悪い顔をなさるかも知れん」
「母が悪い顔をしたッてそんな事は何だけれども……」
「エ、関《かま》わんと仰しゃるのですか」
ト文三はニコニコと笑いながら問懸けた。
「だッてそうじゃ有りません。貴君《あなた》が貴君の考どおりに進退して良心に対して毫《すこ》しも耻《はず》る所が無ければ、人がどんな貌《かお》をしたッて宜《い》いじゃ有りませんか」
文三は笑いを停《とど》めて、
「デスガ唯《ただ》慈母さんが悪い顔をなさ
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