叔母がそう憎くはなくなった、イヤ寧《むし》ろ叔母に対して気の毒に成ッて来た。文三の今我《こんが》は故吾《こご》でない、シカシお政の故吾も今我でない。
 悶着《もんちゃく》以来まだ五日にもならぬに、お政はガラリその容子《ようす》を一変した。勿論以前とてもナニモ非常に文三を親愛していた、手車に乗せて下へも措かぬようにしていたト云うでは無いが、ともかくも以前は、チョイと顔を見る眼元、チョイと物を云う口元に、真似て真似のならぬ一種の和気を帯びていたが、この頃は眼中には雲を懸けて口元には苦笑《にがわらい》を含んでいる。以前は言事がさらさらとしていて厭味気《いやみけ》が無かッたが、この頃は言葉に針を含めば聞て耳が痛くなる。以前は人我《にんが》の隔歴が無かッたが、この頃は全く他人にする。霽顔《せいがん》を見せた事も無い、温語をきいた事も無い。物を言懸ければ聞えぬ風《ふり》をする事も有り、気に喰わぬ事が有れば目を側《そばだ》てて疾視付《にらみつ》ける事も有り、要するに可笑しな処置振りをして見せる。免職が種の悶着はここに至ッて、沍《い》ててかじけて凝結し出した。
 文三は篤実温厚な男、仮令《よし》その人
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