の種類さまざまありて辛酸甘苦いろいろなるを五味を愛憎する心をもて頭《アタマ》くだしに評し去るは豈《あに》に心なきの極ならずや我友二葉亭の大人《うし》このたび思い寄る所ありて浮雲という小説を綴《つづ》りはじめて数ならぬ主人にも一臂《いっぴ》をかすべしとの頼みありき頼まれ甲斐《がい》のあるべくもあらねど一言二言の忠告など思いつくままに申し述べてかくて後大人の縦横なる筆力もて全く綴られしを一閲するにその文章の巧《たくみ》なる勿論《もちろん》主人などの及ぶところにあらず小説文壇に新しき光彩を添なんものは蓋《けだ》しこの冊子にあるべけれと感じて甚《はなは》だ僭越《せんえつ》の振舞にはあれど只《ただ》所々片言|隻句《せっく》の穩かならぬふしを刪正《さんせい》して竟《つい》に公にすることとなりぬ合作の名はあれどもその実四迷大人の筆に成りぬ文章の巧なる所趣向の面白き所は総《すべ》て四迷大人の骨折なり主人の負うところはひとり僭越の咎《とが》のみ読人|乞《こ》うその心してみそなわせ序《ついで》ながら彼の八犬伝|水滸伝《すいこでん》の如き規摸の目ざましきを喜べる目をもてこの小冊子を評したまう事のなからんには
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