は耳を聳《そばだ》てた。※[#「勹<夕」、第3水準1−14−76]《いそが》わしく縁側を通る人の足音がして、暫らくすると梯子段《はしごだん》の下で洋燈をどうとかこうとか云うお鍋の声がしたが、それから後は粛然《ひっそ》として音沙汰《おとさた》をしなくなった。何となく来客でもある容子《ようす》。
高笑いの声がする内は何をしている位は大抵想像が附たからまず宜かッたが、こう静《しずま》ッて見るとサア容子が解らない。文三|些《すこ》し不安心に成ッて来た。「客の相手に叔母は坐舗へ出ている。お鍋も用がなければ可《よ》し、有れば傍に附てはいない。シテ見ると……」文三は起ッたり居たり。
キット思付いた、イヤ憶出《おもいいだ》した事が有る。今初まッた事では無いが、先刻から酔醒めの気味で咽喉《のど》が渇く。水を飲めば渇《かわき》が歇《と》まるが、シカシ水は台所より外には無い。しこうして台所は二階には附いていない。故《ゆえ》に若し水を飲まんと欲せば、是非とも下坐舗へ降りざるを得ず。「折が悪いから何となく何だけれども、シカシ我慢しているも馬鹿気ている」ト種々《さまざま》に分疏《いいわけ》をして、文三は遂《つ
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