索然とした情味の無い面相《かおつき》をして、急にまた彼方《あちら》を向いてしまッて、
「真個《ほんとう》」
ト云いながら、首を傾げてチョイと昇の顔を凝視《みつ》めた光景《ようす》。
「真個さ」
「虚言《うそ》だと聴きませんよ」
アノ筋の解らない他人の談話《はなし》と云う者は、聞いて余り快くは無いもので。
「チョイと番町まで」ト文三が叔母に会釈《えしゃく》をして起上《たちあが》ろうとすると、昇が、
「オイ内海、些《すこ》し噺が有る」
「些《ち》と急ぐから……」
「此方《こっち》も急ぐんだ」
文三はグット視下ろす、昇は視上げる、眼と眼を疾視合《にらみあ》わした、何だか異《おつ》な塩梅《あんばい》で。それでも文三は渋々ながら坐舗《ざしき》へ這入《はい》ッて坐に着いた。
「他の事でも無いんだが」
ト昇がイヤに冷笑しながら咄し出した。スルトお政はフト針仕事の手を止《とど》めて不思議そうに昇の貌《かお》を凝視《みつ》めた。
「今日役所での評判に、この間免職に成た者の中《うち》で二三人復職する者が出来るだろうと云う事だ。そう云やア課長の談話に些し思当る事も有るから、或《あるい》は実説だろうか
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