ンながら来る。
「大分《だいぶ》談判が難《むずかし》かッたと見えますネ」
「大きにお待ち遠うさま」
ト云ッてお勢の顔を視て、
「お前、どうしたんだえ、顔を真赤にして」
ト咎《とが》められてお勢は尚お顔を赤くして、
「オヤそう、歩いたら暖《あった》かに成ッたもんだから……」
「マア本田さん聞ておくんなさい、真個《ほんと》にあの児の銭遣《ぜにづか》いの荒いのにも困りますよ。此間《こないだ》ネ試験の始まる前に来て、一円前借して持ッてッたんですよ。それを十日も経たない内にもう使用《つか》ッちまって、またくれろサ。宿所《うち》ならこだわりを附けてやるんだけれども……」
「あんな事を云ッて虚言《うそ》ですよ、慈母《おっか》さんが小遣いを遣りたがるのよ、オホホホ」
ト無理に押出したような高笑をした。
「黙ッてお出で、お前の知ッた事《こっ》ちゃない……こだわりを附けて遣るんだけれども、途中だからと思ッてネ黙ッて五十銭出して遣ッたら、それんばかじゃ足らないから一円くれろと云うんですよ。そうそうは方図が無いと思ッてどうしても遣らなかッたらネ、不承々々に五十銭取ッてしまッてネ、それからまた今度は、明後
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