bたッてあんな娘にゃア、先方《さき》もそうだろうけれども此方《こッち》も気が無い」
「気が無いから横目なんぞ遣いはなさらなかッたのネー」
「マアサお聞きなさい。あの娘ばかりには限らない、どんな美しいのを視たッても気移りはしない。我輩には『アイドル』(本尊)が一人有るから」
「オヤそう、それはお芽出度う」
「ところが一向お芽出度く無い事サ、所謂《いわゆる》鮑《あわび》の片思いでネ。此方《こっち》はその『アイドル』の顔が視たいばかりで、気まりの悪いのも堪《こら》えて毎日々々その家へ遊びに往けば、先方《さき》じゃ五月蠅《うるさい》と云ッたような顔をして口も碌々《ろくろく》きかない」
 トあじな眼付をしてお勢の貌をジッと凝視《みつ》めた。その意を暁《さと》ッたか暁らないか、お勢は唯ニッコリして、
「厭な『アイドル』ですネ、オホホホ」
「シカシ考えて見れば此方《こっち》が無理サ、先方《さき》には隠然亭主と云ッたような者が有るのだから。それに……」
「モウ何時でしょう」
「それに想《おもい》を懸けるは宜く無い宜く無いと思いながら、因果とまた思い断《き》る事が出来ない。この頃じゃ夢にまで見る」
「オ
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