ツい》昇に誘引《さそわれ》た時既にキッパリ辞《ことわ》ッて行かぬと決心したからは、人が騒ごうが騒ぐまいが隣家《となり》の疝気《せんき》で関繋《かけかまい》のない噺《はなし》、ズット澄していられそうなもののさて居られぬ。嬉《うれ》しそうに人のそわつくを見るに付け聞くに付け、またしても昨日《きのう》の我が憶出《おもいいだ》されて、五月雨《さみだれ》頃の空と湿める、嘆息もする、面白くも無い。
 ヤ面白からぬ。文三には昨日お勢が「貴君《あなた》もお出《いで》なさるか」ト尋ねた時、行かぬと答えたら、「ヘーそうですか」ト平気で澄まして落着払ッていたのが面白からぬ。文三の心持では、成ろう事なら、行けと勧めて貰《もら》いたかッた。それでも尚《な》お強情を張ッて行かなければ、「貴君と御一所でなきゃア私も罷《よ》しましょう」とか何とか言て貰いたかッた……
「シカシこりゃア嫉妬《しっと》じゃアない……」
 と不図何か憶出《おもいだ》して我と我に分疏《いいわけ》を言て見たが、まだ何処《どこ》かくすぐられるようで……不安心で。
 行くも厭《いや》なり留《とど》まるも厭なりで、気がムシャクシャとして肝癪が起る。誰
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