A下着は何時《いつ》ものアレにしてト、それから上着は何衣《どれ》にしようかしら、やッぱり何時もの黄八丈《きはちじょう》にして置こうかしら……」
「もう一ツのお召|縮緬《ちりめん》の方にお為《し》ヨ、彼方《あのほう》がお前にゃア似合うヨ」
「デモあれは品が悪いものヲ」
「品《しん》が悪《わり》いてッたッて」
「アアこんな時にア洋服が有ると好のだけれどもナ……」
「働き者《もん》を亭主《ていし》に持ッて、洋服なとなんなと拵《こせ》えて貰うのサ」
トいう母親の顔をお勢はジット目守《みつ》めて不審顔。
[#改丁]
第二編
第七回 団子坂《だんござか》の観菊《きくみ》 上
日曜日は近頃に無い天下晴れ、風も穏かで塵《ちり》も起《た》たず、暦を繰《くっ》て見れば、旧暦で菊月初旬《きくづきはじめ》という十一月二日の事ゆえ、物観遊山《ものみゆさん》には持《もっ》て来いと云う日和《ひより》。
園田|一家《いっけ》の者は朝から観菊行《きくみゆき》の支度《したく》とりどり。晴衣《はれぎ》の亘長《ゆきたけ》を気にしてのお勢のじれこみがお政の肝癪《かんしゃく》と成て、廻りの髪結の来よう
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