私はさうだともさうでないとも云つた。Oに対する妻の態度が依然として、私が想像してゐるやうな重大な変化を来たしてゐないといふ意味では、さうだと云えるが、妻の心に愛の芽があつてもやはり妻を疑ふことができないといふ意味では、さうではないと云へる。すると妻は又恐ろしく腹を立てた。トミは倦きて泣き出した。妻は帰つて行つた。
晩に妻が一人で又来て告白した。
妻の話では、Oが浜口のところへ行つた晩遅く帰つた。十二時過ぎになつた。妻は二階のOのところへ行つて四十分間(即ち一時まで?)ゐた。何故Oのところにそんなに永くゐたのかそれは思ひ出せない、と妻は云ふ、妻はそのことを今日の夕方小さい小供の寝顔を眺めながら考へた。
玄関で妻がOと出会つた。Oの顔を見ると妻は全身にぞつと悪寒が走るやうな気がした。
○
五日、妻の本当の懺悔。
妻はOの側に四十分間立つてゐた。
どんな風に時が経つたか忘れた。
妻はOに対して一度も憤りを感じたことがない。
○
Oは私を訪ねることを喜ばなかつた。
Oは、何故出発を延ばしたのか私に話さなかつた。
Oは私が居合せない時だけ賑かに喋
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