私は懐疑派だ
二葉亭四迷

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)一向気乗りが為《せ》ぬ

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)到底|偽《うそ》ッぱちより

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)くだらない[#「くだらない」に傍点]
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 私は筆を執っても一向気乗りが為《せ》ぬ。どうもくだらなくて仕方がない。「平凡」なんて、あれは試験をやって見たのだね。ところが題材の取り方が不充分だったから、試験もとうとう達しなくって了った。充分に達しなかったというのは、サタイアになったからだ。その意《つもり》ではなかったのが、どうしても諷刺になって了った。
「其面影」の時には生人形を拵えるというのが自分で付けた註文で、もともと人間を活かそうというのだから、自然、性格に重きを置いたんだが、今度の「平凡」と来ちゃ、人間そのものの性格なんざ眼中に無いんさ。丸ッきり無い訳ではないが、性格はまア第二義に落ちて、それ以外に睨んでいたものがある。一言すれば、それは色々の人が人生に対する態度だな……人間そのものではなくて、人間が人生に対する態度……とい
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