の玉の屑を散らしたように、煌《かがや》きはしないが、ちらついていた、また枯れ草、莠《はぐさ》、藁《わら》の嫌いなくそこら一面にからみついた蜘蛛の巣は風に吹き靡《なび》かされて波たッていた。
自分はたちどまった……心細くなッてきた、眼に遮《さえぎ》る物象はサッパリとはしていれど、おもしろ気もおかし気もなく、さびれはてたうちにも、どうやら間近になッた冬のすさまじさが見透かされるように思われて。小心な※[#「鴫」の「田」に代えて「亞」]《からす》が重そうに羽ばたきをして、烈しく風を切りながら、頭上を高く飛び過ぎたが、フト首を回らして、横目で自分をにらめて、きゅうに飛び上ッて、声をちぎるように啼《な》きわたりながら、林の向うへかくれてしまッた。鳩が幾羽ともなく群をなして勢込んで穀倉の方から飛んできたが、フト柱を建てたように舞い昇ッて、さてパッといっせいに野面に散ッた――ア、秋だ! 誰だか禿山の向うを通るとみえて、から車の音が虚空《こくう》に響きわたッた……
自分は帰宅した、が可哀そうと思ッた「アクーリナ」の姿は久しく眼前にちらついて、忘れかねた。持帰ッた花の束ねは、からびたままで、なおいま
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