あいびき
イワン・ツルゲーネフ Ivan Turgenev
二葉亭四迷訳

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)仏蘭西《フランス》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)先年|仏蘭西《フランス》で死去した

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)※[#「拱」の「共」に代えて「掌」]《ささ》えて
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 このあいびきは先年|仏蘭西《フランス》で死去した、露国では有名な小説家、ツルゲーネフという人の端物《はもの》の作です。今度徳富先生の御依頼で訳してみました。私の訳文は我ながら不思議とソノ何んだが、これでも原文はきわめておもしろいです。

 秋九月中旬というころ、一日自分がさる樺《かば》の林の中に座していたことがあッた。今朝から小雨が降りそそぎ、その晴れ間にはおりおり生ま煖《あたた》かな日かげも射して、まことに気まぐれな空ら合い。あわあわしい白ら雲が空ら一面に棚引くかと思うと、フトまたあちこち瞬く間雲切れがして、むりに押し分けたような雲間から澄みて怜悧《さか》し気《げ》に見える人の眼のごとくに朗《ほがら》かに晴れた蒼
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