ならんとは、今だつて愛してやる心は違ひないのだが。しかしもう駄目だ、今日からは幸福といふものはなくなつてしまふ。無意味な破れた幸福の影を引きずつて行くだけだ。(ベルの音がする。ヘルマー身を起す)何だあれは? こんなに遲く! 愈々やつてきたのかな? 彼奴かしら――ノラ、お前は隱れなさい。さうだ、病氣だといつてやる。
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(ノラは身動きもしないで立つてゐる。ヘルマー扉の方へ行つて開ける)
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ヘルマー エレンか?
エレン (着物を引かけたまま廊下で)奧樣にお手紙が參りました。
ヘルマー 私によこせ(手紙を引つかんで扉を閉める)さうだ、あいつからだ。お前はいけないよ、俺がよむ。
ノラ 讀んで下さい。
ヘルマー (ランプの傍で)讀む勇氣も出ない。二人の身の破滅だらう。私もお前も、いや讀む必要がある。(急いで手紙を荒く開く。二三行讀んで封入してあるものを見る、喜びの叫聲)ノラ!
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(ノラは不思議さうに男を見る)
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ヘル
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