マー ノラ! どうしたといふんだ、待つた、もう一度讀んで見よう。さうだ/\。やつぱりさうだ。俺は助かつたよ、ノラ、私は助かつたよ。
ノラ 私は?
ヘルマー 無論お前もだ、二人とも助かつた、二人とも。これご覽、あの男がお話の證文を返してきた。手紙には思ひ返した、詫をすると書いてある。これから幸福な生涯に入ると書いてある――まあ、あの男のことなんかどつちでもかまはないが、俺達は助かつたな、ノラ、これでもう誰もお前を苦しめる者は無いよ。ねえ、ノラ、だが先づ何よりもこの嫌なものをなくしてしまはう。も一度見て――(證文をちよつと見て)いや見まい/\。今までのことは、私にとつては馬鹿馬鹿しい夢のやうなものだ。(證文と二通の手紙とを裂いてずた/\にする、そして火の中に投じて燃えるのを見詰める)さあ、これでいゝ。手紙によると、クリスマスの晩から――してみると、ノラ、この三日といふもの、お前は隨分辛かつたらうな。
ノラ この三日の間、全く死物狂ひでしたのよ。
ヘルマー そして他に苦しみを逃れる道といつては無いんだから――いや、もう、あの恐ろしいことは考へまいね。俺達はたゞ愉快に祝つて、もうすんだもうすん
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