рフ毒蜘蛛タランチユラに刺されたものが、筋肉の痙攣を起こして舞踏するやうな樣子をして苦しむところから、その形に似た踊の名となつたものだと言ひ傳へられてゐる)のことは、略筋にも草案にも全く出てゐない。完成本に始めて現はれてくる。從つて第二幕の如きは、ほとんどすべて完成本で見るやうな面白い場面を逸してゐる。結末、ノラが狂亂的にタランテラを踊つてヘルマーを引とめるところは、その代りに、ピアノをひいて、『ペール・ギュント』の中にあるアニトラの歌を唄つたり踊つたりするが、ランクとの對話でノラが踊りの衣裳を見せたり、絹の靴下でランクを打つたりする微妙なところはあり得ない。のみならずランクがノラに對して自分の心を打明ける前後から、ノラが「私にさういつて下すつたのが惡いんです。おつしやる必要はなかつたのでせう?」といふ臺詞の邊、この劇の※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]話として最も趣味の深い一節が草案ではまだほとんど出來てゐない。
第三幕は草案と完成本と甚しく違つてゐない。こゝはノラをして婦人の自覺、解放を説かしめるところであるから、問題劇としては一篇の骨子にあ
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