ケざる限り、我々スカンヂネヴ※[#小書き片仮名ヰ、141−5]アの作家は當國の法律の保護を受くる能はず、ドイツの作家のスカンヂネヴ※[#小書き片仮名ヰ、141−6]アにおけるもまた同樣に御座候。從つて小生等の劇は、ドイツにおいては、飜譯者、劇場支配人、舞臺監督者及び小劇場の俳優等が暴行に委せられ居り候。小生の作がこの危險に瀕する場合には、小生は經驗の教ゆるところにより、暴行を小生みづから行ひて、もつて一層不注意未熟なる人々の手に取扱はれ飜案せらるゝことを避け申候。
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[#地から2字上げ]頓首
當時ドイツでは一般にノラが家を去るのを批難してゐた爲にかやうなことが起こつたのである。
六
『人形の家』の結末に對する世間の批難は、多く「いくら自分の教育の爲だつて妻が夫を棄てて家を出る法はない、ことに子供を棄てゝ出られるものではない、出た後のノラはどうするのだらう」といふのであつた。そこで、イブセンみづからの右の改竄をはじめとし、世間にもこの通俗的な要求を充たすために種々の作が『人形の家』を種にして現はれた。『後の人形の家』ともいふべき種類のものである
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