ニ信じ候。この劇が現在のまゝの結末にてストックホルムにおいても、クリスチアニアにおいても、コーペンヘーゲンにおいても、ほとんど空前の成功を收めたるに徴して、この理は明かと存じ候。結末を變更したる作は、小生がこれを必要と認めたるがためにはこれなく、ただ北ドイツの一劇場監督者と、同地方の巡廻興行にてノラに扮する一女優との求めに由りたるものに候。右改作の寫し一部こゝに御送附申上候。御覽の上、かゝるものを用ふるは徒らにこの作の效果を弱むるに過ぎざることを御了知下されたく、希望の至に御座候。小生は貴下が必ずこの劇を原作のまゝにて御演出下され候ことと信じて疑はず候。
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[#地から2字上げ]頓首
尚こんな改作をせざるを得なかつた事情については、デンマルクの『ナチョナール・チデンデ』紙に寄せた、次のやうな書簡がある。
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千八百八十年二月十七日、ミュンヘンにて
記者足下――尊敬する貴紙第千三百六十號において拜見せしフレンスブルグよりの一書面によれば、『人形の家』(ドイツにては『ノラ』)は彼の地にて劇の結末を變更して演ぜられ、その變更は明かに小生の言ひつ
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