な。何、ぐず/\しているの」
と叱られて、二人の少女は土間へ下りて、混乱した下駄を一足一足整えはじめた。店の間や茶の間にもはたきの音が聞えはじめた。掃除は鶴子と茂子と時子がはじめたのであった。(菊龍や富江がおれば彼女等も手伝った。)鶴子は一人で大声をあげて大ざっぱに掻き廻していた。茂子は黙然として掃いていた。時子はぶつ/\呟いてろくに掃除をしようともしなかった。(菊龍さんや富江さんは今頃はまだ暖かい床に眠っているのだろうに、ほんとにばからしい。今夜は電話をかけて昨夜のあの番頭をよんでやろう)などと考えていたのだ。台所では婆さんが(婆さんといってもまだ四十四、五の、つる/\した、――素質が恵まれていず、その数奇な生涯の一切の苦患から何一つも吸収摂受していないだけに、老いもせずに、丈夫な馬のようによく働いた)、瓦斯《ガス》の火を濫費して、ようやく水のようなおかゆ[#「おかゆ」に傍点]を大きな二升釜に拵《こしら》えたところであった。廓では朝飯を一年中お粥をすする習慣である。
「みなさん、御飯ですよ」
台所の横の中庭の奥座敷の間に、直角の線を形成して、この家の食堂があった。食堂の片隅に三尺
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