な美しいお幸を見た。
「ゆっくりしていらっしゃるといいわ、小母さん」
 お幸は洗面所のほうへ去った。
「お茂さん、その紙屑を拾ってゆくといいわ」
 お茂が肌着を脱いで単衣にきかえて茶の間へ出てこようとするのを、時子が細帯をぐる/\巻きしめながらお茂を呼びとめた。その呼び止め方の気随《きずい》さがお茂の心に痛みを与えた。
「何を」
「その紙屑ですよ」
 時子がお茂の足下を指さした。そこに、丸められた、汚血のにじんだ紙くずが転がっていた。お茂ははっ[#「はっ」に傍点]としたらしかったが、非常な速力で、昨夜、悲しい暗鬱な気持で遅く帰って来てから床にはいったまでの間を反省してみるような目つきで、お茂は言った。
「これはわたしのではなくってよ」
「お茂ちゃんのでなくて誰の」
「誰なのかわたしが知っているものかね」
「ふん――」
 時子は、細帯をきゅうっとしめて、ふくらんだ乳房のあたりをぽんと叩いた。叩いた拍子に時子の※[#「糸+峰のつくり」、66−6]絹裏《もみうら》の袖からころころと同じような紙屑が畳の上へ転げ落ちた。お茂の眼は輝いた。が、その輝きは輝いたことを羞じらうようにまた持前の暗い容貌
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