熱気を帯びて、冬子は苦しくなって来た。彼女は寝返りを打って、彼女の右手に並んでいる同じ女達を見つめた。黄金色の太陽の光は幅広い流れを溢れさしているのも知らずに、皆は夜の疲れで眠っているらしかった。
 小さな弁慶縞の掛蒲団の襟のところに二つの桃われ髪が行儀よく並んで、顔は蒲団にかくれて見えないのは、米子と市子の二人の赤襟の少女だった。米子は今年十四ではじめて赤襟になったのだが、「米ちゃんがなるならわたい[#「わたい」に傍点]もなる」と言って一つ違いの市子もとう/\赤襟になってしまった。米子は細身な静かな少女だったが、市子はややお転婆で、活気があって、花のように美しかった。市子は多くの客が可愛がったが、米子は少数ないいお客に愛せられていた。しかし二人自身はそんなことに無頓着であった。下手な踊りを踊って、そして賞められて喜んでいた。二人とも誰を明らかに父と指さしていいか分らないような芸妓の子として出生し、養われて来た女だったのだ。彼女等は人生に就いて廓より外に知らなかった。彼女等は職業、愛、道徳、――に対して一生正当な観念すら得られないのではないだろうか。
 この二人の少女に隣合って一つの寝
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