しれない。そして、平一郎は(冬子も)、もっと寛やかに、意識を渾一にして話したくてならなかったが、しかし何故かそれをさせない、冬子との話にある隔たりを強いる「無言の意志」が家一杯に充満しているように考えられてならなかった。「汝等は自分の奴隷である。汝等は自分の言葉の喇叺《ラッパ》であれ、汝等は汝等自身の天性を滅却して跪け」と大音声で叫んでいる精神が感じられた。お芳やお玉が用もないのに絶えず出入するのだ。そして監視の眼を光らすのだ。その光らせる源には「天野」がいる!
ああ、何んという孤独! また淋しさ! あのように立派で美しくて名妓とまで言われた冬子、その冬子が今はとう/\天野に支配されて、「別邸」に幽閉される囚人であろうとは!
「救って頂戴、平一郎さん」冬子の嘆きと念願が平一郎に聞える。平一郎はこれから天野の邸へ行こうとする自分もまた「囚人」になるのではあるまいかと考えてみた。
「この自分を虜《とりこ》にできるならしてみるがいい! 己だけはならないぞ!」
四日目の午過ぎに奥山という四十二、三の背の高い男が来た。彼は平一郎と同じ金沢の生まれであった。冬子は彼に「どうぞよろしく」と会釈し
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