自分の心に不可抗な不安と離隔と、一切を知るものの寂しさを感じて来たからだった。(天野の妻が自分に似ているのも無理はない。彼女は自分の同胞であるのだもの! ――そしてあの天野は自分の姉の綾子を抱く次の夜はこの冬子を抱いているのか※[#疑問符感嘆符、1−8−77])
「小母さん、平一郎さんは?」
「何処へ行ったのか今朝から見えませんのです。わたしもあれ[#「あれ」に傍点]のこの頃にはどうしてよいか困っております」とお光は日々の苦労を打ち明けずにいられなかった。お光は、平一郎が停学に処分されたことから、学校を厭がっていること、幽鬱で気が荒くなっていることを打ち明けた。
「どうしてよいかわたしにも分りません。ただ、あまり干渉がましいことをするよりか、なるべく自由にしとく方があの子の気象にも好いと思ってはおりますが、それに学資だって冬子さん、中学を卒業するまで続くかどうかさえが危ぶまれる位でしてね」
お光はしみ/″\心配そうに話した。こうした苦しみは話するだけで、幾分軽くなるものである。冬子はお光の話を一生懸命に聞いていた。そして話の中途から、熱心さで瞳が輝きはじめた。
「小母さん、平一郎さん
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