すとフロックコートを着た会社の方の間に小母さんそっくりの女の方の顔が見えましたの。わたしはそのとき自分の眼の迷いではないかしらと思いましてようく見ていますと、その方は小母さんよりか肥っていて、小母さんよりか眼の怕い顔容《かおつき》で、小母さんよりか立派でだん/\小母さんに似ていなくなりましたが、あんまり不思議で傍の人にそっと聞いてみますと、小母さん、それが天野さんの奥様なのでした。――そのとき感じた水を浴びるようなすまないような情けないような妬ましいような心持は、わたし一生忘られません。それに小母さんにそっくりなんですもの、わたし何んと言って好いか分らない位、深い恐ろしさを感じたのでございますの」
冬子はそれから、妾という生活の本当のどん底は頼りない寂しいものであること、今でもいつ捨てられはしまいかという不安の絶えないこと、社会的に常にある迫害と擯斥《ひんせき》が絶えないことを話した。
「何んだか、こう二年もお別れしていたような気がしなくなりましてよ、小母さん、何んと言ったらいいでしょう、ほんとに自分の母親に甘えているような気がしますのよ」
お光は顔を伏せずにいられなかった。お光は
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