らう音がしたのに、三人共助かったという風に顔を見合わした。ついで階段を昇る衣ずれの音が聞えた。それ程に静かな冬の深い夜であった。
「尾沢さん、いらしって?」静子が小さな声で言ってあがって来た。彼女の前髪に白い雪片が消えかかっていた。
「静子か」
「尾沢さん」彼女はぺたり尾沢の正面に坐った。彼女は笑わなかった。
「どうかしたのかい」
「尾沢さん、わたしと結婚して下さらない?」
「突然にどうかしたのかな」
「わたし銀行を出されてしまいましたの。――あなたのせい[#「せい」に傍点]で。お腹ではもう時々動いていますわ」
「本当かい」尾沢は訊《き》いた。真面目だった。
「本当ですの」
「己は知らないよ」
尾沢は冷やかに裁判官が審判するように言い放った。静子ははじめ真面目に受け取らないらしかったが、尾沢の冷やかな表情はそれを真面目にとらさずにおかなかった。静子の豊かな肉付の顔がはじめて蒼くなった。彼女は容易にものが言えないようであった。すると、超意識的に憑かれた人のような乾いた笑いが彼女の顔を歪めた。
「わたし、ここより行くところは無いのですから。今夜から泊めて頂戴! 半年やそこら遊んで生活して
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