を生むなんて、何だかおかしいじゃないの。あなたが父さんになったり、あたしが母さんになったりしてさ」
「あはっはっはっ、永井君、そう焦らない方がいいね。とにかく現在会えるのなら結構じゃないかと思うよ。知れないで愛子さんとの仲を続けられれば結構じゃないか。僕達は人間ですからね。僕達は地上の生物ですからね。碌なことのあろう筈がないじゃありませんかね。どうせ苦痛より外にない地上じゃないかね。逃げたかったら逃げてみるさね。万が一、北海道か満洲かでうまく君達二人の新しい生活がはじめられればそんないいことはないだろうし、捕えられたら捕えられたで、殺されるなり、牢へ入れられるなり、またはひょっとして天下晴れて一緒になれるなりどうとかなるのさ。――しかしそんな危い仕事よりも、誰も知らない間に出来るだけ上手に立ち廻っているのもいいことはいいと思うよ」
永井は苦笑して尾沢の言葉を聞いていた。
「君のように考えてしまえばそれまでの話だけれど――」
「しかし愛子さんも可哀そうね」と静子が言った。
「そうです、可哀そうです」と永井が言う。
一しきり一座の者は沈黙した。平一郎はわけもなしに、歓喜に襲われていた。
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