金を返せと責めるだろうというのです。それじゃ僕がどこかへ連れて逃げようと言うと、愛子はきっと貴方は牢へ入れられると言います。誘拐罪とかでね」
「牢へはいる覚悟で連れて逃げたらどうです」と宮岡が言う。
「馬鹿な! 自分達にとっては罪悪という観念はないのだからね! 僕達がかりそめにも恐怖とか暗さを感じることがあるとしても、それは、先方が誤った観念からどういうことをしでかすかも知れないという先方の誤認する思想の程度を洞察してのことに過ぎないのです。僕達の方が正しいのです。先方の男が単に愛子の美貌を見て、悪辣な手段で体《てい》よく奪って行ったのが不当なのです。そして法律と世間はそのやり方が巧かったばかりにその不当をも正当と認めます。そんな法律にしたがって、好んで牢へはいることは運命への侮辱です。罰があたります」
「それじゃどうしようと言うのだ」
「僕達は手も足も出ないのです。しかし、僕達はどうしてこのままにおれましょう。――それに尾沢君、愛子は妊娠しているらしいのです!」
「あはっはっはっ。な、静いちゃん。お前も少し怪しいってんじゃなかったかい」
「そうですの。少し怪しいの。わたしがあなたの子
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