僕の親友の大河です」
「そう、大河さん」女はこう言って寝転がっている尾沢を、「あなた、あなた」と起こそうとした。尾沢は突然に「あれ[#「あれ」に傍点]を読んだかい」と唸った。
「読みましたの。でもあと[#「あと」に傍点]の方はわたしよく分らなかったわ。随分大変ね」
「でも、己の書くものは普通の奴には分りゃしないよ。しかし、静《し》いちゃん、あたりまえのことを書いただけなんだよ」
「でも大変ね。――だっていいじゃないの。もうわたしというものがいるんじゃなくって。どうしたって逃れっこのない宇宙なら、こうしている瞬間瞬間を出来るだけ面白く暮した方が好くはなくって? 牢屋なら牢屋でもいいじゃないの。牢屋で抱き合っているのも好くはなくって?」
「それあいいだろうよ。忘れられるものならね。己には忘れられないからね。己には静いちゃん、己達の本質、己達の生命が実に永遠であり無限であることが身に沁みて感じられもし、認識も出来るんだ。ところが、己にはその永遠であることが外の奴等のように歓びではないのだ。たとえ己が太陽であったにせよ、もしくはそれ以上の万能なものであり得るにせよ、己は嫌だ。己は何者でもありた
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