やし過ぎるようだ。己はお前と一緒にいるときはとても己自身の生涯の歴史を正直に静かに言えないことを幾度もの試みの後ようやく発見したわけだ。しかし己達の恋愛はもはや普通以上に深くなっていることも確実な事実と認めなくてはなるまい。いつ迄もこうして過ぎられる己達でもあるまいじゃないか。お前はどうかも知れない。己という人間が「思ったよりつまらない平凡な弱虫だったのね」とお前がいつだか言った言葉から推察しても、お前は己に愛想をつかしているかも知れない。愛想をつかされてもそれに不足を言えない己である位は承認しよう。お前はもっと強い悪党を要求していたか知れない。しかし静子、金を自分の懐へ集めることを知らない悪党もいそうもないじゃないか。己が悪党でないことは貧乏なことから考えれば一度で分ることじゃないかしら。金に眼をくれない大悪人――そんなものは随分稀にはいるかもしれないが、金が無さ過ぎるといかな大悪人もすっかりいい加減な馬鹿になるものさね。たとえ地球を爆破して人類を絶滅し、宇宙の運行に狂いを生ぜしめようと意志するほどの超人的大悪人でも金がなくては手も足も出ないで、やがて死んで行くより仕方のないものだ位
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