い粉雪が絶えず降っていた。濁った灰色の空から無気味な無音の状態で白い粉がちら/\降るのである。湿った地面は絶えず白い雪片を吸収してその存在を消滅させたが、家々の屋根や軒や電信柱はすでに二、三寸の雪を積らせていた。北国のこの市街ではもう四度目の雪で、時折烈風が街中を吹き荒れて行くこともあった。平一郎と深井はマントの頭巾を目深に冠《か》ぶり、一本の傘を二人でさして人通りの絶えた暗い陰鬱な、生存ということが全然無価値なものだと想わすような夕暮の街を急ぎ足で歩いていた。二人は何も言葉を交わさなかった。時々顔を見合わした。深井は寂しい顔をして平一郎の未知の世界を仰望するような情熱を帯びた眼付をちら/\と横目で見た。深井は自分が今平一郎を誘惑する悪魔の役目をしているのではないかしらと疑ってみた。半年あまりの間の秘密を何故自分は打ち明けたのだろうか。しかし平一郎の寂しい一切の喜悦を失われたような顔を見てはそのまま打ち捨てて置くに忍びなかった。平一郎は、時折溜息をつく深井の生き生きした美しい顔色を見て、この愛する者が導いてゆく新しい世界を渇望の眼で仰ぐのであった。母と冬子と和歌子と深井との四人の愛する
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