あの憎い天野一郎とこの家を永久に駈落ちしますよ。みんなはわたしが彼奴《あいつ》に惚れて逃げたと言うでしょう。しかしお光さん、お前さんだけは、わたしが一生涯かかって今日のこの屈辱の復讐をするために仇敵《かたき》を逃がさないように、仇敵と共に逃げたことを知っていて下さい。そして、あの大河さんのところへはあなたがわたしの身代りに行って下さいよ。分って? ええ、お光さん、わたしが一生の願いですよ」綾子は空を見上げるようにして唸った。
「無礼な! 兄や父を丸め込んで、それで足りないでこのわたしまでを征服しようとしたって……このわたしの身体を征服したって、この本当のわたしをどうできるものでしょう! 本当のわたしはいつまでも俊太郎さんのもの! ――憎い奴、憎い奴だ! 天野一郎の畜生! この日を覚えているがいい! きっと復讐はする! 一生かかって復讐する! ――お光さん、わたしは天野と結婚します。そうして十分わたしの美しい肉体で酔わしてやりましょう。しかし十年二十年のうちに、きっと今日のこの復讐をして、あの力に充ちた天野を滅ぼしてみせます! お光さん、お前さんは俊太郎さんへ行って下さいよ。そしてこのこ
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