ら》かな春の日の照っている菜の花畑で、雲雀の声を聞きながら、幸福な春の半日を静かな野に送るのを常としていた。
お信が苦しい恋愛の胎内から生み下した三人の児は、北野家の勢威とお里の愛のうちに長閑《のどか》な平和な日を育って行った。悩みというも、悲しみというも、平和な大海の面に騒ぐ小波にすぎなかった。幸福なうちにお光達の青春がやって来ていた。お光は彼女の青春が来ない少女の時代に対してはそう大した記憶がなかった。
「ほんとにお前さんと綾さんとはよく似ていましたよ。二人が眠っている寝顔を見るとどちらがどちらか分らない位でした。でも、そんなときにはどっちか一人を起こせば分りました。お前さんであれば起こされてはじめはぼんやりしているが、わたしだと分れば穏やかに笑ったけれど、綾子さんだと厳しく怒るように瞳をみはって、それからひきつったように顔を歪めましたっけ」とお里がお光に二人の少女時代の話をした。
少女時代にお光が唯一つ忘られない事実がないでもなかった。それは村の貧しい小作人の一人(背の低い陰鬱な、貧乏のために結婚をせずに一生いた男だという)がある夏の夜、村の娘を無理に関係をつけてしまった。娘
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