も、廃《すた》りかけた蒼白な馴染深いお信の魂と体を愛さずにいられなかった。
お信が中年の苦しい初産で生み落した嬰児は、頭ばかり青ぶくれな身体の小さい、泣声のひひひという汚ない男の児であったという。それがお光の兄にあたるのであった。お光はお光が生まれない以前のあるひとときを想像することが好きであった。それは丁度秋十月の末頃であらねばならなかった。一年の辛労の報償を暮れ易い秋の日に取り入れなくてはならない百姓達は晩《おそ》くまで野に働いていた。地は一面に誇らしい黄金色の稲穂の波をうねらせている野面が北野家の奥座敷から木の間隠れに見わたされる。
「お信さん、どんな工合ですかね」
「大分いいようですよ」お信は蒼白い痩せた頬にすまないような寂しい微笑を湛《たた》えて、お里が抱いている嬰児を見向きもしない。
「ちっとも自分の子のように可愛いい気のしない子だよ。その子はお前さんの子ですのね」
「そうして戴けたら、わたし嬉しいですけれど――いい子だこと」
お里は青ぶくれのした嬰児の頬に自分の赤らんだぽた/\した頬をすりあてていた。
「おかしいのよ。ちっとも自分の子が可愛くないのだから――傍へよると
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