実業家という人達が一日中をこの別荘の広間に過ごした。冬子はそれらの人達をもてなすうちにも彼等に対する彼の態度を注意深く見|戍《まも》っていた。まるで彼は一日中を行ない澄ました修行者のように寝そべっているのだった。訪問が一しきり止む閑には女中に足から腰の辺をもまして、静かに瞑目している。そうして一日が暮れた。その夜、彼は女中にビールを命じて冬子を相手に静かに浅く酌み交わした。そして夜は前夜のように死んだような沈黙と静けさであった。
(ああ、このような男、このような男、このような男がこの世に生きていたとは!)
 幾年の間、抑圧して来た情熱が一切の規約を越え破って冬子をわな/\顫えしめた。どうしてもじっとしていられない。手足が火のように燃えて来た。もう自分は芸妓でない。「情を売る」旅の女ではない。一人の勝れた女、一人の潜めた可能力を一斉に噴き出して、はじめて感じる恋の聖《きよ》い熱情に燃えた女だ。
 三日目の夜更けのことであった。冬子は生死さえ分らないような彼の動かない身体に力いっぱいしがみついて、全身、脈々と湧く焔の波に顫わせていた。鈍い半眼が、落着いたままに開いてじっと見据えた。「冬子か
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