白い顔、高い鼻、ほつそりした眉毛!あゝ若い文士は永久に眠つてゐる!
女達は二度、泣き出した。
静かなざはめきの中に長い棺は表へ出された。
生花、造花、花車、従姉の長男の九つに成る児が位牌を持ち七つに成る男の児が香入れを持つた。
古い門、古い杉、そうしてなつかしい古い我家よ、若い文士の遺骸は棺にのせられて一歩一歩長い旅路に上つて行くではないか!
暗い木立や、垣根の多い町を幾つも/\越してやがて行列は華やかな店の多い広路に出て居た。棺の後に従ふ主人と妹。十幾台の車がつづいて、其の内には白いハンケチを顔に当てて居る従姉妹等が居た。暑い午後の日差がきら/\ときらめいて、道行く女のパラソルの水色が燃える様に美しかつた。白いペンキの大橋があつて橋の下には黒ずんだ水が流れて居た。
行列は白い埃に包まれていろんな町をすぎて行つた。やがて広い/\野原の見える町はずれに来て行列は其処で一寸立止つた。
主人は遠い野原を隔てた火葬場の煙突から白い/\煙がゆるやかに立のぼつて居るのを見た時、何とも知れぬ恐ろしさを感じて、不図横手の町家を眺めた。(をはり)
底本:「石川近代文学全集4」石川
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