の》もしからず。東京《とうきやう》の或る固執派《オルソドキシカー》教会《けうくわい》に属《ぞく》する女学校《ぢよがつかう》の教師《けうし》が曾我物語《そがものがたり》の挿画《さしゑ》に男女《なんによ》の図《づ》あるを見《み》て猥褻《わいせつ》文書《ぶんしよ》なりと飛《と》んだ感違《かんちが》ひして炉中《ろちう》に投込《なげこ》みしといふ一ツ咄《ばなし》も近頃《ちかごろ》笑止《せうし》の限《かぎ》りなれど、如何《どう》考《かんが》へても聖書《バイブル》よりは小説《せうせつ》の方《はう》が面白《おもしろ》いには違《ちが》ひなく、教師《けうし》の眼《め》を窃《ぬす》んでは「よくッてよ」派《は》小説《せうせつ》に現《うつゝ》を抜《ぬ》かすは此頃《このごろ》の女生徒《ぢよせいと》気質《かたぎ》なり。例《たと》へば地《ち》を打《う》つ槌《つち》は外《はづ》る※[#二の字点、1−2−22]とも青年《せいねん》男女《なんによ》にして小説《せうせつ》読《よ》まぬ者なしといふ鑑定《かんてい》は恐《おそ》らく外《はづ》れツこななるべし。
俗界《ぞくかい》に於《お》ける小説《せうせつ》の勢力《せいりよく》斯《
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