き、兄は俵あみ、省作とおはまは繩ない、姉は母を相手にぼろ繕《つくろ》いらしい。稲刈りから見れば休んでるようなものだ。向こうの政《まさ》公も藁をかついでやって来た。
「どうか一人仲間入りさしてください。おや、おはまさんも繩ない……こりゃありがたい。わたしはまたせめておはまさんの姿の見えるところで繩ないがしたくてきたのに……」
「あア政さん、ここへはいんなさい。さアはま公、おまえがよくて来たつんだから……」
「あらアいやな」
 おはまはつッと立って省作の右手へうつる。政さんはにこにこしながら省作の左手へ座をとる。
「昨日の稲刈りはにぎやかでしたねい。わたしはおはまさんに惚れっちゃった。ハハハハハ」
 政さんは話上手でよく場合に応じての話がすこぶるうまいもんだ。戯言《じょうだん》とまじめと工合よく取り交ぜて人を話に引き入れる。政さんはおはまの顔を時々見てはおとよさんをほめる。
「女の前でよその女をほめるのは、ちっと失敬なわけだけど、えいやねい、おはまさん、おはまさんはおとよさんびいきだからねい」
 おはまはわきを見て相手にならない。政さんはだれへも渡りをつけて話をする。外は秋雨しとしとと降っ
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