ひだ僕のこころに
るゐるゐとしてかくれてゐた美しいものが
今こんなにも明るい地球の春の朝紅《あさやけ》となつて
寶玉をふくんだともし火のやうに
かくかくと僕の眼にうかんで來たのか
それは逢ふべくして逢へなかつた
心の城の姉妹のやうに
このきよらかな朝の境界線にたつて
ふたたびめぐりあひし喜び!
あらあらしかつた僕は今さらに
その尊い姉妹を尊敬しようとおもふ。
大きさ
田舍にゐるとただ明るく大きくなりたい
大きい感じでいつぱいの靜かさとだんまりの
この上ないあたらしい透明な場所で
林から藪へ、川から畑へ
丘のまはりときれいな雲のまはり
はてしもない清新な眺めからくる風
その大きいあざやかな色と重みをもちたい
田舍の大きさこそ自然の中央で
誰もこの大きさに不服をとなへるものはない
萬象の目のさめるやうな大きさ
あらゆる小さい世界の最もはづれの
ああその無形な
孔雀いろにかがやいた四月のぐるり[#「ぐるり」に傍点]。
寂寞
僕はそこここの植物の魔法のやうな色どりに
氣の弱いうすい情熱をひそめて行かう
身體中についてゐた音と影を
すき透るやうにふるひ落してしまつて
雜木林や畑の
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