山の木と
いきてはねかへる青い蔓をもつてしばりからげ
誰もとがめもしなければ見ることもない村村の
その又荒れ狂つてゐるままにすててある
あたらしい地球のこのするどい境地へ置かう。
清けき饗宴に
春が來てふたたび村へ來るといつもながらの
清けき饗宴に時間たがはず參列して
おのが健康とあたりの新大氣がしづかにめぐりあひ
ふたたびかわかぬ喜びの海に生の焔をたのしみ
あざやかなる勢ひとふくよかなる滿足に染まり
あます處なき地球人としての歡喜の手を
生墻《いけがき》のやうにあをあをと身につなぐべく。
仄かなる午前の風
村村へつづく庭の木の盛り上れる方より
わかき午前の日のかがやきと匂やかなる風は
いきながら空氣の娘のごとくにも近より來る
わが影をきよらかにめぐり半身に日を彩りつつ
そこらなる花花と蕾とをあたたかく一致せしめ
うすき喜びの電氣を燦めかして
椅子のほとりを黄金の日時計ともうたがはしめ
又はうつくしき地の光明臺の如くにも
はるかなる南風のほのほをひびかせ
うちあけたる朝の情熱をひたひたと滴らし
わが身の上を青空のさなかにすき透らせ。
清朗
古き寺の庭のまはりにひ
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